生活習慣病

生活習慣病とは

生活習慣病ストレス・運動不足・暴飲暴食・喫煙など生活習慣が乱れることで発症する生活習慣病は、高齢者だけでなく若い方も発症するケースが多くなっています。生活習慣病はサイレントキラーとも呼ばれており、自覚症状がなく、動脈硬化を進行させます。複数の疾患が重なることにより、症状を悪化させたり、脳卒中や心臓病などの重篤な疾患に繋がるリスクが高まります。健康診断などで異常を指摘された際には、受診して早期に治療を行う事が重要です。

高血圧症

心臓から送り出される血液が血管の壁を押す圧力を血圧と言います。心臓が収縮する時には勢いよく送り出され、血圧が高くなります。この時の血圧を「収縮期血圧」と呼びます。心臓が拡張した時には血圧が低くなり、この時の血圧は「拡張期血圧」と言います。「収縮期血圧が140mmHg以上」・「拡張期血圧が90mmHg以上」のどちらかに当てはまると高血圧とされます。高血圧は血管に負荷をかけ、動脈硬化を進行させ、脳卒中や心筋梗塞などの重篤な疾患を引き起こすリスクが高まります。適切な治療を受けて血圧をコントロールすることが重要です。

高血圧症の原因

高血圧は主にストレス・遺伝的要因・塩分の過剰摂取・肥満・喫煙などの不規則な生活習慣が発症の原因となります。これらの中でも、塩分の過剰摂取は高血圧の最大の原因となることが多く、減塩を意識することで、薬の服用をしなくても生活できることもあります。
なお、生活習慣に問題がなくても高血圧を発症することがあり、その原因として腫瘍性の稀な病気やホルモンの異常などがあります。
生活習慣病は、加齢はもちろん遺伝的要因や生活習慣の乱れが続くことで10代、20代、30代などの若年層でも発症することがあります。生活習慣が乱れないよう、日々の過ごし方を見つめ直すことが大切です。
日本高血圧学会は、適正な塩分摂取量は1日6g未満としており、世界保健機関(WHO)では1日5g未満を推奨しています。入院時に出される食事の塩分量は1日6~8g程度が一般的です。病院食が薄いと感じる方は、普段の食事で塩分を過剰に摂取している可能性が高いですので、注意が必要です。

高血圧の治療

高血圧治療開始時の日本高血圧学会ガイドラインにおける血圧の基準値

診察室血圧の場合 140/90mmHg
家庭血圧の場合 135/85mmHg

 

日本高血圧学会ガイドラインにおける降圧目標値

75歳未満の成人 130/80mmHg未満(家庭血圧125/75mmHg未満)
糖尿病合併 130/80mmHg未満(家庭血圧125/75mmHg未満)
慢性腎臓病(蛋白尿陽性)  130/80mmHg(家庭血圧125/75mmHg未満)
75歳以上 140/90mmHg(家庭血圧135/85mmHg未満)


※血圧は測定環境・緊張・運動など少しの変化で値が変わりやすいです。病院・クリニックで血圧測定を行うと緊張などの理由によって数値が高く出る傾向にありますが、ご自宅で測定した場合は数値が低めに出る傾向がありますので、診察時血圧と家庭血圧は別のものとして考える必要があります。

家庭血圧の重要性

正確な血圧測定のため、ご自宅にて座って落ち着いた状態で起床時・就寝時の1日2回(起床時1回のみでも可)の測定を推奨しています。測定前に排尿・排便を済ませておくことも大切です。
高血圧治療で降圧薬を使用する場合の数値の目安は、1日で最低の値が出る家庭血圧となります。日中の活動時には血圧が高くなりやすいため、その数値を目安に治療してしまうと降圧薬で最低血圧を下回ってしまい、治療によって低血圧を起こすリスクがありますので、家庭血圧を把握することは高血圧治療においてとても重要です。

生活習慣の改善

血圧のコントロールのためには、血圧を正常値に戻すための生活習慣の改善を継続することが重要です。主に減塩・減量・禁煙・禁酒(減酒)や運動などを行っていただきますが、無理なく継続することが大切ですので、精神的・身体的にも負担がかかり過ぎないように少しずつ節制を行います。
しかし、患者様の状態によっては、厳しい食事制限や生活習慣の改善が必要になることもありますので、医師と相談して患者様に合った治療方法を探していくことが大切です。

降圧剤

降圧剤は複数の種類が存在し、処方する際はガイドラインに準じて患者様に合った薬をまずは1種類、少量から処方していきます。始めから強いものを使用して治療を行うと、身体に大きな負担をかけることになりかねません。
降圧剤は1~2種類、最大でも3種類を使用ながら調節していき、降圧目標値に近づけるため血圧の値に気をつけながら治療を行います。また、降圧剤を使用する際はご自身の独断で服薬を中止することは、血圧の数値が大きく変化して身体への負担が大きくなります。医師の指導を受け、毎日の服用を継続し、血圧を安定させることが大切です。
夏の時期は血管拡張が起こりやすく、血圧が低く出やすい時期です。発汗・塩分の喪失・脱水も起こることがあるため、血圧の低下に注意が必要です。なお、収縮期血圧(最高血圧)が100mmHgを下回る場合には、医師に相談し降圧薬の処方を減らしてもらうことをお勧めします。

降圧剤の主な種類

  • アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ARB)
  • β遮断薬
  • 利尿薬 など
  • アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬
  • カルシウム拮抗薬

脂質異常症(高脂血症)

脂質とは、中性脂肪とコレステロールに分類され、ホルモンや細胞の構成・エネルギー源として欠かせない栄養素です。コレステロールにはHDLコレステロール(善玉コレステロール)、LDLコレステロール(悪玉コレステロール)があり、中性脂肪(トリグリセライド)と血液中で、バランスよく存在していますが、HDLコレステロールが少なすぎる場合、LDLコレステロール値やトリグリセライド値が高すぎる場合には「脂質異常症」とされます。
特にLDLコレステロール値・トリグリセライド値が高すぎる場合には高脂血症と呼ばれます。(過去の呼称です)

脂質異常の基準値

高LDL(悪玉)コレステロール血症≧140mg/dl(120~139mg/dlは境界域)
低HDL(善玉)コレステロール血症<40mg/dl
高トリグリセライド(中性脂肪)血症≧150mg/dl

脂質異常症の治療

脂質異常症には様々な種類が存在しますが、基本的には運動療法・食事療法をなどを行い生活習慣の改善を図ります。
以下に記載した種類ごとに、治療方針は異なります。

高LDLコレステロール血症

血中に含まれるLDLコレステロール(悪玉コレステロール)が過剰に分泌している状態を改善するには、食事療法が重要です。1日のカロリー摂取量を意識し、1日3食の栄養バランスを考えた食事を摂るようにしましょう。食事を摂る上で、脂質・コレステロールの摂り過ぎには注意しましょう。果物や野菜は活性酸素の働きを抑える効果があり、青魚にはDHA・EPAが豊富に含まれています。豆類・キノコ類は食物繊維が豊富なため、バランスよく積極的に摂取していくことが大切です。

高トリグリセライド血症

トリグリセライドとは、中性脂肪のことを指します。肉・魚・油などに含まれる脂質・体脂肪を構成する物質です。
血中のトリグリセライド値を適正にするため、食事は1日3食栄養バランスを意識し、運動を週3回・1日30分以上は継続させることが大切です。ただし、栄養バランスが取れていても過食はせず、腹八分目で抑えるようにしましょう。

低HDLコレステロール血症

血中の脂質のバランスが崩れ、善玉コレステロール値が少なくなる状態です。脂質を過剰に制限することは避けるとともに、トランス脂肪酸を多く含むショートニングやマーガリンは控えます。栄養バランスを考えた食事を心がけるようにしましょう。

脂質異常症の治療薬

運動療法・食事療法は脂質異常症の方には最適な治療法となります。生活習慣の乱れがある方や軽症高値の方はこの治療からスタートしますが、それでも効果が不十分な場合は薬物療法を行います。
遺伝的要因が疑われる方・脂質の値が高い方は、脂質の値をコントロールするために薬物治療から治療を始めます。お薬を毎日継続して飲み続けることが大切です。数値が高くなることを防止するため、ご自身の独断で服薬を中止することは避けましょう。

糖尿病

糖尿病はインスリンの作用が上手く働かないことが原因となり、高血糖の状態が慢性的に続く病気です。糖尿病は初期症状がないことが多く、血糖値がかなり高い状態になると徐々に症状が現れるようになります。異常に喉が渇く・疲れやすい・頻尿・体重減少などが主な症状です。気になる症状が現れた場合には、早めに当院まで受診してください。
糖尿病は様々な合併症を発症しやすく、失明のリスクがある糖尿病網膜症、不整脈、立ち眩みなどの症状が出る糖尿病神経障害、末期腎不全に陥る可能性がある糖尿病性腎症、脳梗塞、心筋梗塞など重篤な疾患を引き起こす恐れがあるため、注意が必要です。
HbA1c値(ヘモグロビンエーワンシー)が6.2%以上で確定診断されます。当院では、患者様の年齢・活動量・認知症の有無を熟考し、最適な治療方針を考えていきます。

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生活習慣病としての糖尿病

糖尿病は1型糖尿病・2型糖尿病の2種類あります。
1型糖尿病は、主に自己免疫が原因となって何らかの拍子に発症します。
2型糖尿病は生活習慣の乱れによる暴飲暴食・運動不足・喫煙などが原因となって発症します。肥満傾向にある中高年世代によく見られ、糖尿病の患者様の約95%が2型糖尿病、約5%が1型糖尿病に当てはまります。

糖尿病の治療

糖尿病を発症し、慢性的に血糖値の高い状態が続くことで合併症のリスクが高まります。病気と上手に付き合いながら、健康的な生活を送るために、血糖値を正常に保つ治療を行い、合併症の発症と進行を予防していきましょう。

食事療法

食事療法は1度に食べる量を管理すること、間食をやめること、よく噛み、時間をかけて食べることが大切なポイントです。食事療法を行っていても、美味しい食事を摂るためには摂取する糖質・エネルギーのバランスを管理し、栄養バランスを考えた食事を摂るようにしましょう。日々の食事で少しずつ意識していくようにしましょう。

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運動療法

有酸素運動や筋力トレーニングを行うことで、インスリンが効きやすくなり、血糖値を下げることが期待できます。運動することで血流が改善し、ブドウ糖が細胞へ吸収されやすくなります。しかし、負荷をかけすぎる運動は心臓・腎臓に大きな負担がかかるだけでなく、血糖値を上昇させるホルモン物質であるアドレナリン、カテコラミンが分泌されやすくなるため、血糖値が一時的に高くなってしまいます。また、怪我をすると長期間運動制限することになり、モチベーションの低下に繋がるため、注意が必要です。医師の指示に従い、上手に運動療法に取り組むようにしましょう。

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薬物療法

糖尿病を治療する上で、食事療法・運動療法は非常に有効であり、食事療法・運動療法を行うだけで血糖コントロールが良くなる方もいます。しかし、食事療法や運動療法を継続しても十分な効果を得られなかった場合などは薬物療法が検討されます。
糖尿病の薬物療法では内服薬・注射薬など豊富な種類がありますので、患者様に合わせて薬の量・種類を選択してHbA1cの値を適正にしていきます。服用量や注射の回数は、患者様の生活習慣・選択した治療法によって異なりますので、内容次第で治療方針を決めていきます。

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高尿酸血症(痛風)

痛風発作高尿酸血症は、血中の尿酸濃度が慢性的に高まった状態(8mg/dl以上)になり、痛風発作・腎結石・腎機能障害(痛風腎)・尿路尿管結石などを発症しやすくなります。耳介・肘関節・足の親指に尿酸が固まってできた結晶が結節(痛風結節)として出現することがあります。患者様の特に男性が多く、男女の割合は10:1となります。治療はプリン体を多く含む食品の摂取をできるだけ避け、尿酸値を下げる内服薬を使用して行います。

痛風発作について

慢性的に血中の尿酸値が高い状態が続くと、尿酸の結晶が関節に付着し炎症を起こします。この症状を痛風発作といいます。症状は主に足の親指の付け根に現れ、熱を持って赤く腫れあがり、激痛を伴います。足の親指の他にも手首・膝・足首・足の甲にも症状が出ることがあります。気温が高くなる夏場は脱水状態になりやすく、痛風発作を起こしやすいです。こまめな水分補給を行い、発作を起こさないようにしましょう。消炎鎮痛薬で痛みや腫れなどの症状を改善します。症状が落ち着いたら再発防止のため、尿酸値を下げる内服薬を服用します。

プリン体を多く含む食品とお酒

魚介類・肉類・お酒はプリン体を多く含んでおり、特に海老・鰹・鰯・レバー・白子・干し椎茸・魚の干物などの摂りすぎに注意が必要です。ビール酵母・ローヤルゼリー・クロレラ・DNA/RNA(核酸)も健康食品として知られていますが、プリン体が多く含まれていますので、過剰摂取には注意が必要です。醸造酒の部類に入るビール・日本酒・ワインはプリン体を多く含むため、蒸留酒の部類に入るウイスキーや焼酎の方がよいとされています。
お酒を多く飲む方は、痛風発作が2倍起こりやすいとされています。飲酒は適量を意識して楽しむようにしましょう。

高尿酸血症の治療

まずは運動療法・食事療法などで生活習慣を見直し、尿酸値を下げていきます。しかし、尿酸値を急激に下げると痛風発作を起こしやすくしてしまうため、尿酸排泄抑制薬・尿酸産生抑制薬などの内服薬を服用する最初の3カ月間は尿酸値を緩やかに下げられるように調整していきます。高尿酸値症は、尿酸値が下がっても尿酸の結晶が溶けるまで数カ月~数年はかかる可能性があるため、長期的に忍耐強く治療に励む必要があります。

生活習慣

BMI(体重÷身長の2乗で表される肥満指数)が25以上である肥満体質の方は痛風発作の危険性が高くなります。そのため、体重コントロールのために運動療法が必要になりますが、医師の指示に従って行いましょう。排尿量を増やすための水分補給は大切ですが、腎疾患・心疾患をお持ちの方は水分補給をしすぎに注意し、医師の指示を仰ぎましょう。

食事

魚や肉(特に内臓系の部位)などの動物性たんぱく・お酒はプリン体を多く含みます。1日のプリン体の摂取量は400mgに止める必要があるため、ビールであれば500ml未満、日本酒であれば1合未満の飲酒量に抑え、過剰摂取にならないようにしましょう。

メタボリックシンドローム

高血圧・高血糖・脂質異常のうち2つ以上に該当し、内臓脂肪型肥満と代謝機能不全の状態に陥ることをメタボリックシンドロームといいます。メタボリックシンドロームは糖尿病・高血圧、高尿酸血症、腎臓病などの疾患を併発する可能性が高いです。また、放置してしまうと急性心筋梗塞・脳梗塞といった命の危険がある病気を発症するリスクがあります。発症した場合、運動療法・食事療法を行って体重・血圧・血糖値を管理していくことが重要となります。

メタボリックシンドロームの診断基準

必須項目

メタボリックシンドロームを診断する際、内蔵脂肪型肥満の判断が必要となります。そのため、立って軽く呼吸した状態にし、腹囲の大きさをへその位置で計測します。

男性≧85cm
女性≧90cm

選択項目

以下に示した血圧・血糖・血中脂質の数値が2つ以上該当した場合、メタボリックシンドロームの確定診断の対象になります。

収縮期血圧(最大血圧)≧130mmHg
拡張期血圧(細小血圧)≧85mmHg
空腹時血糖 ≧110mh/dl
高トリグリセライド血症 ≧150mg/dl
低HDLコレステロール血症 <40mg/dl
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